フードボウルの前で、少し困った様子の高齢の犬とそっと寄り添う手
「食べない」の裏には、いろいろな理由が隠れています。まず気づいてあげることから。

いつもは待ちきれない様子だったごはんを、最近は残すようになった。少し匂いをかいで、ふいと離れてしまう——。 年齢を重ねた犬や猫では、食べる量が少しずつ減ってくるのはよく見られる変化です。それでも、目の前で愛犬・愛猫が食べてくれないのは、ご家族にとって本当に心配なものですよね。

この記事では、おうちでできる「食べやすくする工夫」と、「これは早めに病院へ」という受診のサインの両方を整理してお伝えします。 大切なのは、工夫で乗り切ってよい変化なのか、病気が隠れているサインなのかを見きわめることです。

食欲が落ちる背景には、体の不調が隠れていることが少なくありません。 とくに、まったく食べない状態が続くとき、体重が落ちてきたとき、元気がない・吐く・下痢をする・水も飲まないといった様子をともなうときは、 「年のせい」と様子を見すぎず、早めにかかりつけの動物病院にご相談ください。
猫では、数日食べない状態が続くと肝臓に負担がかかることが知られています。とくに注意してあげてください。

なぜ、食べる量が減るの?

高齢の子の食欲が落ちるとき、その背景にはさまざまな理由が考えられます。ひとつだけとは限らず、いくつか重なっていることもあります。

  • 口やお口まわりの痛み——歯周病や口内炎など。食べたい気持ちはあるのに、噛むと痛くて残してしまうことがあります。
  • 気持ち悪さ(吐き気)——腎臓や消化器などの不調が、食欲に影響することがあります。
  • 体のどこかの痛み——関節の痛みなどで、食器まで行くのがつらい・かがむ姿勢がつらい場合も。
  • においや味を感じる力の低下——年齢とともに嗅覚・味覚が衰えると、ごはんの「おいしそう」が伝わりにくくなります。
  • お薬の影響や、環境の変化・ストレス——飲んでいるお薬や、引っ越し・同居動物の変化などがきっかけになることもあります。

こうして並べるとわかるように、「食べない」は、体からのサインであることが多いのです一般的な考え方。 だからこそ、おうちでの工夫と並行して、背景に不調がないかを獣医師と確認することが大切になります。

おうちでできる、食べやすくする工夫

少し高くした食器と、温めて湯気の立つごはん 香りを立てる 少し高さを
ほんの少し温めて香りを立てる/食器に高さをつける。小さな工夫が食欲を後押しします。

病気が隠れていないかを確認したうえで、あるいは受診と並行して、ご家庭では次のような工夫が助けになります。無理をさせず、その子が「食べたい」と思える後押しを、と考えてみてください。

  • ほんの少し温める——人肌くらいに温めると香りが立ち、食欲を刺激しやすくなります。熱すぎないように、あげる前に温度を確かめてください。
  • 香りの強いものを少し足す——ウェットフードや、その子が好きな香りのトッピングを少量。ドライが苦手になった子には、ふやかす・ウェットに切り替えるのも手です。
  • 食器の高さを見直す——首や関節がつらい子は、食器を少し高くすると、かがまずに楽な姿勢で食べられます。
  • 少量ずつ、回数を分けて——一度にたくさんより、少しずつ何回かに分けるほうが食べやすいことがあります。
  • 手からあげる・そばにいる——安心できる環境で、静かに見守る。ご家族がそばにいるだけで食が進む子もいます。

ただし、持病がある子の食事・フードの変更は、自己判断の前にかかりつけの獣医師に相談を。 腎臓病などで療法食を食べている場合、良かれと思ったトッピングが負担になることもあります。 また、無理に口へ押し込む「強制給餌」は、やり方を誤ると危険をともなうため、必要なときは方法を獣医師に教わってから行ってください。

こんなときは、早めに動物病院へ

次のような様子が見られたら、おうちでの工夫だけで様子を見続けず、受診の目安と考えてください。 高齢の子では、食欲の変化が病気の最初のサインであることが多く、早く気づけるほど打てる手が増えます。

  • まる1日以上、ほとんど食べない(とくに猫は要注意)
  • 体重が落ちてきた/やせてきた
  • 吐く・下痢をする・水も飲まない
  • 元気がなく、ぐったりしている
  • 口をくちゃくちゃする、よだれ、口が臭う(口の痛みのサインのことがあります)

「これくらいで病院に行っていいのかな」とためらう必要はありません。食べない日が続いてつらい・心配だと感じたら、それはもう十分に相談してよいサインです。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療方針、特定の商品・お薬をおすすめするものではありません。 食欲が落ちる原因やその対応は一頭ずつ異なります。愛犬・愛猫の食事や体調については、必ずかかりつけの動物病院にご相談ください。

この記事について

本記事は、高齢の犬・猫のケアに関する一般的な獣医学の知見をもとに、獣医師が構成しています。特定の研究・商品・お薬を推奨するものではありません。

※記載の内容は、獣医療の進歩により今後アップデートされる可能性があります。

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